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Tigh Mhíchíl

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インターナショナルスクールに通う学生と米国人ジャーナリストの対話

電子書籍

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モーリー・ロバートソン『モーリーの「知的サバイバル」セミナー 番外編01 学生との対話「プランBを持って世界へ!」』<「知的サバイバル」セミナー> (カドカワ・ミニッツブック、2013) [Kindle版]

 

 2013年10月から12月にかけて東京で開催された国際情勢を学ぶためのセミナーを電子書籍化したもの。そのセミナーの中でも特に若い人向けに特別に行った対話形式のセミナーを収める。対話の相手は18歳(兄・ハルカ)と15歳(妹・ヒヨリ)の日本人学生(インターナショナルスクール)の兄妹。講師のジャーナリスト、モーリー・ロバートソン (Morley Robertson) は日本語で受験したアメリカ人としての初の東京大学現役合格者。

 最初の話題はソーシャル・メディアにおけるトロール(troll)の問題。不和を起こす目的で話題と無関係の議論をふっかける輩のこと。動詞でも用いる。オンライン・ハラスメントの一種。「荒らし」。

 兄妹の二人ともちゃんと対処している。そこから話題は troll とヘイター (hater) との違いに移る。そこでも二人は、troll は不特定多数に誤解を起こさせるのが目的なのに対し hater は特定の相手を攻撃する人と、正確な理解を示す。ヒヨリは9歳からフェイスブックを使い始めたというから、これくらいは何でもないのだろう。

 さらに最近のいじめは実生活かネットか、どちらから始まるのかとのモーリーの問いに対し、どちらかというとネットかもしれないとの驚くべき答えが。ネタの種類によっては、そこからリアルでのいじめにもつながるという。

 全体として、モーリーが若い人にレクチャーするというスタンスで始まっているにもかかわらず、実際には逆に若い人に実態を教えてもらっている感が強い。若者の洞察や分析は実に鋭く、モーリーのような世代が常識として持っている知識はもはや殆ど役に立たないことがわかる。その意味では、少なくとも前半部分に関しては(新しいことを教えてくれるという意味での)「真の」著者はこの二人、小野崎悠と小野崎日和の兄妹だと思う。

 後半は日本人が世界で生き残るための「プランB」(バックアッププラン、代替案、不測の事態に備えた contingency plan, 環境が変わっても順応できる能力)戦略について日本史などを材料に、ほぼモーリーが一方的に語る。その要諦は、勢いに乗りすぎず、自分を客観的に見ることだという。モーリーは「(日本人は)理想的な被統治民」というが、何らかの歴史的根拠に基づいた発言とはとても思えない。

 意識のトレーニング法としてモーリーは「ソクラティックダイアログ」をすすめる。相手の言に対し「なぜ」の問いを繰返す方法。

 広い視野を持つために、正しいドキュメンタリーの作り方を学べともいう。入り組んだ状態をありのままに記録し、後味の悪いものにするのが、正しい本来のドキュメンタリーだという。あらかじめ用意されたラストにつながるようなのは、ある種のプロパガンダであると。

 後半でもやはり面白い視点は若者から出てくる。例えば、ヒヨリの通った小学校では PYP (PYP learner profile) という学習を取入れていたという。エッセイを書くときなどに、自分がどの特性(risk taking, independence などの特性)を使ったかを明記する。自己分析に役立てるためだ。日本の警察物のTV番組などではよく犯罪者のプロファイリングが出てくるが、それの学習者版(というのは語弊があるが)を小学生のときから自分で意識するわけだ。面白い。国際バカロレアに基づく教育プログラムだが、日本での PYP 実施校は現在15校ほどあるようだ。

 

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