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辞書に載せたい1300語――驚きと発見


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「もっと明鏡」委員会編『みんなで国語辞典!―これも、日本語』(大修館書店、2006)



 本書は、『明鏡国語辞典 携帯版』の発刊を記念して、国語辞典に載せたい言葉や意味・例文を半年間募集した中から選定し、国語辞典を模した形でまとめたもの。応募作品11万点の審査委員長をつとめた北原保雄(『明鏡国語辞典』編者)が監修している。

 内容は多彩である。若者言葉、ネット用語、学校の言葉、日常の言葉、擬音語、業界用語など、あらゆる分野に、当時(募集期間は2005年10月〜2006年3月)新語、新定義、新用法が氾濫していたことが分かる。

 その中には今日の目で見ると、普通に使われているものもあり、今なお新鮮な驚きを伴うものもある。こんなことを考えている人がいるのだと発見する喜びもある。

 第1章「若者のことば」は副題が「多分、来年は通じません」とあるが、どうしてどうして、今でも立派に通じることばがいくつもあり、本当に辞書に入れていいのではないかとも思える。

 例えば、「イタい」「コクる」「テンパる」「ありえない」「イケメン」「オサレ」「大人買い」「お持ち帰り」「がっつり」「キレる」「空気を読む」「小悪魔」「さむい」「地味に」「天然ボケ」「チャラい」「てか」「ドン引き」「はじける」「パない」「微妙」「ぶっちゃけ」「へたれ」「マジ(で)」「ママ友」「目力」「めんどい」 など。一部は既に陳腐化し死語化さえしているのもある。

 中に「漢(おとこ)」があるのには驚く。もっと前からあることばかと思ったが、2005年頃の新語だったのだ。

 この当時の若者ことばを見ていると、彼らの造語能力、時代に対する感度のよさには舌を巻く。現代の日本語の語彙のうち、生きのよい部分の多くが彼らの日本語力によって形成されてきたのではないかとさえ思う。このあたりのことばを使うことなしにラノベの会話部分なんか書けないのじゃないか。いや、マジで。

 とまあ、このへんまでは本書を論じる人にとっては常識的なところだろう。評者が嬉しくなったのは、第6章「日常のことば・通のことば」収録の語や用法だ。例えば、「傘かしげ」。これは残念ながら使われているのを実際に聞いたことはないが、よく目にする行動である。「傘をさしてすれ違うとき、相手が通りやすいように傘を傾ける意」である。「江戸しぐさ」と呼ばれる江戸時代の町民のマナーのひとつらしい。日本人の洗練を示すいいことばだと思うのだけど。

 それから、もうひとつ、同章から「地頭(じあたま)」。「学歴などとは無関係の生まれつきの頭脳」の意だ。この意は、このことば抜きでは今や表せないように思う。

 一般には辞書のたぐいは新しいものほどよいことになっているが、新語辞典のようなものは少し古くても、それなりの存在意義があることが本書を再読して判った。


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