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Catholic 「カトリック」の発音について


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最近、TV で「カソリック」という発音をよく聞くが、誤解に基づいていると思われるので、書いておく。
結論から言うと、日本では「カトリック」と言うべきである。(ローマ)カトリック教会を指すつもりであるならば。
1981年にヨハネ・パウロ二世教皇が来日された時に、日本のカトリック教会(窓口は現在のカトリック中央協議会)はマスコミに対して正式に教会用語の表記について通知したが、その際、「カトリック」という表記は自明の前提であったと思う。*1
一般になぜ「カソリック」という発音が流布しており、勝谷誠彦のような尊敬に値する賢明な人物(皮肉はありません)までもがその表記を使っているのかは、理解に苦しむ。恐らく、ある種の英語の発音によっているのだろう。が、英語音によらなければならない必要性も必然性もない。さらに言えば、日本では、「カソリック」という表記は一種の侮蔑的表現ともみなされうる。以下、語源に関わる雑文。


仮に、人々が指しているのがローマ・カトリック教会であるとしよう。イタリア語ではカトリック教徒のことは cattolico カットーリコ、カトリック教会のことは Chiesa cattolica キエーザ・カットーリカである。
ラテン語カトリック教会のことは ecclesia catholicus エックレーシア・カトリクスである。*2 ラテン語の th は、ギリシア語の θ を写すもので、「帯気音」に分類される。t の音を強い呼気とともに発音する。つまり、t + h 「ト」のような音になる。現実には、日本語では t と区別して表記するのが難しいので t のように表記することがよく行われる。theatrum テアートルム(劇場)や thema テマ(テーマ)のように。
catholic (Catholic) の語源は、ギリシア語に遡れば、καθολικοs(カトリコス、「全般的な、普遍的な」)から来ており、その語は κατα(カタ、「〜に関する」)+‘ολοs(ホロス、「全体」) から来ている。ギリシア語でも θ はもちろん帯気音で、t に強い気息を伴わせた「ト」のような発音である。
公の場で発言(発音)する人々にはぜひ考慮していただきたい。

*1:なお、その際通知されたのは「ローマ教皇(きょうこう)」、「ローマ教皇庁(きょうこうちょう)」、「枢機卿(すうききょう)」などの用語の統一であったらしいが、最初の二つは今にいたるまで報道機関はほぼ採用していない。最後の枢機卿は日本のカトリック教会では伝統的には「すうきけい」と言ってきた。

*2:研究社の羅和辞典で ecclesia latina を「ローマン・カソリック教会」と英語式に訳しているのは理解に苦しむ。もちろん、「ローマ・カトリック教会」と書くべきである。