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人類学と災害


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 産経新聞2月7日付夕刊より。寺田匡宏さん(国立歴史民俗博物館外来研究員)による「民族誌的理解という方法」からピックアップ。現地の人々の世界観をベースにして、災害のことも考えるという姿勢。
 「自明視されることの多い復旧や復興という概念を問い直す視点も重要である。」という指摘にははっとさせられる。机上の計算で援助を考える役人には特に必要な視点だろう。
 「被災した人にとって災害後とは、元に戻ることではない。新たな出来事の生成である。」うーん。これは全く思いつかなかった。例として、ピナトゥボ火山噴火に関する清水展著『噴火のこだま』(九州大学出版会)。
 「時間が不可逆的に進む以上、元に戻ることはありえない。災害後の推移を予定調和的なものとしてではなく、時々刻々生起しつつある今ここの出来事としてとらえるのが民族誌という方法である。」これは凄い。まさにドンピシャ。自らの先入観の解体をも伴うだろうが、それを物ともせず立向かう勇気を持てと言われているような気がしてくる。
 この論文で最も印象に残ったのは次の一文。

林によると、災害とは自明性が解体する経験である。

林とは、「災害人類学」を提唱する林勲男さん(国立民族学博物館助教授)のこと。
 参考図書: 『歴史・災害・人間』上下(国立歴史民俗博物館、2003)。