Tigh Mhíchíl

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2004年の回顧〜TV篇


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 一年を回顧する時を迎え、今年目に触れたテレビ番組を振返る。日頃TVに関心があまりない人間の戯言と聞流していただければ幸い。
 一言でいうと、インターネットTVの可能性を感じた一年であった。インターネットで(のみ)配信されているタイプのテレビ番組群に出会ううちに、ようやく捜し求めていた番組に近いものに巡り合ったという感慨が今はある。その種の番組はケーブルTVにもなかった。インターネットで初めて出会ったのである。*1
 インターネットTVの何がありがたいといって、見たい時に見られるというのが大きい。オンディマンド配信の長所である。ただ、見たい時が必ずしも受信が良好な時とは限らない。回線インフラの整備は国や地域によって違いがあり、たとえば米国東海岸ケネディ・センターの番組は一時間物でも30分以下でダウンロード出来るのに対し、アイルランド西海岸の TG4 の番組は30分の番組を見るのに40分以上かかることも多い。
 それでも、見たい時に見られるのはありがたい。速度の問題は将来改善するであろうから我慢できる。ポイントは、見たい番組が見たい時に見られるということだ。
 さて、私にとって今年発見した、見たかった番組というのは、いま名前を出した TG4 の番組である。ふつう「ティー・ジー・キャハル」と言っている。この読みかたは糸井さんの「ほぼ日式 声に出して読めない日本語。」に出題しても恐らく殆どの人が読めないだろう。
 TG4 はアイルランドアイルランド語テレビ放送局である。RTÉ (アイルランド国営放送協会)の法的傘下にあり、年間365時間分の番組を無償供与されている。TG4 の特色はそうした英語等による番組以外の部分にある。一日7時間のアイルランド語番組(大人向け、子供向け)を放送しているのが最大の特徴だ。
 放送は各種の形態で行われているが、ウェブキャストによるインターネット放送もある(有料)。そのインターネット版の放送は週に4時間分の新しい番組が見られる。そのうちの30分は対談番組「コーラー」 Comhrá (「会話」の意)である。

 前置きが長くなったが、ここからが本題。私が今年一番印象に残ったのは、この Comhrá の番組。
 毎週月曜(以前は木曜)のこの30分番組では、毎回一人のゲストを呼んできて、ホストのマールティン・トム・ヒョーニーン(オ・リアダ杯二回獲得の大歌手)がいろいろと話(や実演)を引出す。日本でいうと、「徹子の部屋」のような番組である。ただし、同番組との大きな違いは、いわゆる「有名人」は殆ど出演しないことである。出てくるのは、名もなき市井の人々が多い。
 名もない人々の話がつまらないかというと、全く逆で人生はこれほど劇的で数奇なのかと感じ入ること多く、感涙も禁じ難い。文字化されないオーラル・ヒストリーの宝庫とも言える。参考までに、私が最近見た同番組の出演者の名前の一部を書いておく。中には有名な歌手も混じっている。*2

Michael Mháire an Gabha Ó Ceannabháin
Helmi Saidléar
Pól Mac Ruairí
Josie Ó Loideain
Cáit Ní Mhainnin
Pádraig Ó hÁinifein
Peadar MacDonnchadha
Pádraig Ó Gionnán
Jimmy Mhici Jimmy Mac Grianna
Brídín Uí Mhaolagain
Domhnall Mac Sithigh
Tony Pratschke
Eibhlis de Paor
Seandradh Uí Chathasaigh
Martin Mhurchadh Ó Conghaile
Colm Ó Loideain
Judeen Seoighe
Eibhlí Ní Dhonnacha
Flann Ó Riain
Seán Ó Dochartaigh
Eamonn Ó Cianáin
Josie Sheáin Jeaic
Ane Mooney

 これらの人々は概ね話をする。中には歌を歌ったりダンスをしてくれる人や、稀には手品をしてくれる人もある。話はあまりに多岐にわたるので、要約すらできない。ともかく、何十年と生きてきた人の生涯を振返る話がぎっしり詰まっているとだけ書いておく。すべてアイルランド語で語られるが、時に英語字幕も附くので、アイルランド語の生きた教材としてこれ以上のものはないと感じられる。
 こういう口承の物語は文字で読むのと違い、記憶の深い層にどんどんと堆積してゆき、しまいには精神に大きな影響を与えるだろうという予感がする。
 私はたまには活字も読むが、その話はあした。

*1:これについては、別種の情報もあるが、未確認

*2:2004年10月25日放送分のシャン・ノース歌唱の大家ジョシー・ヒョーン・ジャックや、2003年10月30日放送分のソラハ・ニ・ヘーラハル(アン・マルクィーンの娘)などは、シャン・ノースのファンなら、これらを見るためだけに視聴料を払っても惜しくないだろう