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加藤楸邨の句


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遊ぶなり月夜の蟻のひとつぶと

 大岡信さんの「折々のうた」(朝日新聞12月2日付)で「相手と自分の距離感と一体感のとり方がみごと」とのコメント附きで引用されていた。「蟻のひとつぶ」という部分が一度読んだら忘れられない。なぜこの句でこの蟻が意識の深いところに残るのか考えていたら、「遊ぶなり」が 'ari' の音を含んで共鳴していることに気がついた。つまり、自分はある意味で蟻と一体化しているのである。さらに、「つぶ」と「月」と頭韻を成す語の円いもの同士の照応が、えもいわれぬスケール感を醸しだしている。不思議な句だ。