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Sean-Nos in the USA (10) Navan


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 (承前:米国におけるシャン・ノース歌唱事情――いかに録音が少ないか。しかし、優秀な歌い手は現に存在する。例えば、ボストンの Bridget Fitzgerald と Sally Coyne。アイルランドにおける三種の流儀とその代表盤。情報源。デトロイトの Virginia Stevens。モンタナの Alice。ニューヨークのシンガーズ・サークル。シカゴ在住の至宝 Aine Meenaghan。若手ホープ、セントルイスの Brian Hart。)
 マディスン(Wisconsin 州の州都)の Sile (Sheila) Sigley は Navan の一員だが、アイルランド語シャン・ノースもやるらしい。香港育ち。
 Navan は二枚目 《Mairneas》 がアイルランドでも発売される注目のア・カペラ・グループで、全ケルト語圏の歌をレパートリーにしている。こういうグループはありそうでなかなかない。
 アルバムを聞く限りでは、シャン・ノースの発声による歌いかたではなく、どちらかというと、例えばマドリガルを歌うグループのようなクラシカルな発声に聞こえる。従って、彼らの無伴奏合唱は英国のブルー・マーダーのような地声のアーシーな感覚ではなく、典雅な響きがする。日本でいうと、シャナヒーと比較すると興味深い。一聴すると、霊妙なケルト音楽風アプローチにも聞こえるが、そのコーラスにはある種の芯があり、聞きごたえがある。でなければ、ティム・デネヒーがわざわざ "Therapeutic!" と評したりしないだろう。特に、この二枚目のトラック6 <Tá Mé 'Nois 'Caoineadh> というマン島語の歌は、他ではちょっと聞いたことのない響き。一度聞くとちょっと忘れられない。
 マディスンには Celtic Cultural Center もあり、アイルランド語文化も含めて熱気が感じられる。(つづく)