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Piano Blues


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 2003年秋、米PBSで放映された7本のブルーズ・ドキュメンタリー "Scorsese Presents the Blues" シリーズのピアノの巻。(写真は CD 版)

 《Piano Blues》 (Columbia CVD 55807, 2003)

 上の番号は米版だけど、日本向けの普通の DVD プレーヤーで問題なく再生できる。85分。

 一言でいって、感動した。
 特に、初めて見たプロフェッサー・ロングヘアの動く姿、それもアップライト・ピアノに向かい手首を鍵盤より少し下げて弾き始め、頭のてっぺんからヘナヘナ声を出す姿に感動した。もし、彼の映像がこのほかにもあるなら、ぜひ見たい。<Tipitina> を歌っている。

 それから、彼の前後で映るマーシャ・ボールとドクター・ジョン(マック・レベナック)。マーシャは「私の好きなフェス(プロフェッサー・ロングヘア)の感じはね――」と言いながら弾き始め、まごうことなきニュー・オーリンズのグルーヴが巻き起こる。隣に座っているクリント・イーストウッド(この作品の監督)も巻き込むようなグルーヴだ。

 フェス〜マーシャ〜マックの三人が登場するあたりは何か暖かいものが全体を包んでおり、ニュー・オーリンズ音楽の魔法がかかっているような心地がする。

 そのほかにも見どころは多い。チャールズ・ブラウン、デイヴ・ブルーベック、オーティス・スパン、ヘンリー・グレイ、レイー・チャールズ等々。

 なお、このマーティン・スコーセイジ(スコセッシ)制作総指揮の「ザ・ブルーズ・ムーヴィー・プロジェクト」は8月末から東京の映画館で公開されている。ただし、この「ピアノ・ブルーズ」を除く6本だけである。「ピアノ・ブルーズ」は9月21日午前4時50分から WOWOW で放送される予定。

 シリーズは同名のサウンドトラック CD も発売されている。が、この「ピアノ・ブルーズ」の分を少し試聴してみた限りでは、同じ音源も使われてはいるが、既存の録音に差替えてあるトラックもある。スタジオでの連弾セッションの模様がきちんと収められているらしきトラックもあるので、完全を期すなら DVD と CD との両方を入手する必要があるだろう。

 このシリーズの他の巻についてちょっとメモしておく。

  • Feel Like Going Home》 (監督 Martin Scorsese) …… ミシシッピから西アフリカへとルーツを探る(Willie King, Taj Mahal, Otha Turner, and Ali Farka Toure) → Otha Turner が今に伝えるファイフとドラムの音楽は組合せこそ北アイルランド音楽に似ているが全く違う音楽で驚く
  • The Soul of a Man》 (監督 Wim Wenders) …… ヴェンダース好みの三人の生涯(Skip James, Blind Willie Johnson, and J. B. Lenoir)
  • The Road to Memphis》 (監督 Richard Pearce) …… メンフィスの今昔(B.B. King, Bobby Rush, Rosco Gordon and Ike Turner; historical footage of Howlin' Wolf and Rufus Thomas)
  • The Warming by the Devil's Fire》 (監督 Charles Burnett) …… 1950年代のミシシッピの一少年を通してみたブルーズ(Sister Rosetta Tharpe, Big Bill Broonzy, Elizabeth Cotten)
  • Godfathers and Sons》 (監督 Marc Levin) …… シカゴに生きる伝統とヒップ・ホップ(Howlin' Wolf, Muddy Waters, the Paul Butterfield Blues Band, Koko Taylor, Otis Rush, Magic Slim, Ike Turner, and Sam Lay)

 なお、PBSサイト で全体像がわかる。各作品のさわりも見ることができる。