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今年中に30枚 (18) Marcia Ball: Let Me Play with Your Poodle


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 ルイジアナの香りぷんぷんのマーシャ・ボールの1997年のアルバム。

 Marcia Ball: 《Let Me Play with Your Poodle》 (Rounder CD 3151, 1997)

 現代のルイジアナ音楽を代表するピアニストでありシンガー・ソングライターであるマーシャ・ボール。1949年テキサス州オレンジ市の生まれだが、育ったのは州境を超えたルイジアナ州ヴィントンの町。このルイジアナからテキサスにかけてのボーダー地帯は、音楽的文化的境界領域として数多のルーツ音楽家を輩出してきた。たとえば、Gatemouth Brown、Janis Joplin、Clifton Chenier、Johnny Winter などなど。ちょうどアイルランドにおける Sliabh Luachra (コーク〜ケリー〜リムリックの県境)みたいなもので、音楽的に豊かなところなのだろう。

 マーシャは現在は主にテキサス州オースティンで活躍しているが、ベースにあるのはニュー・オーリンズなどミシシッピ・デルタ地帯のブルーズやR & B。スワンプ・ロックの感覚も濃厚だ。オースティンを活躍の中心地にしたわけは変わっていて、最初の夫とサン・フランシスコをめざして西に向かっているとき、車が故障してオースティンで修理している間に、昔のバンド仲間と会って音楽や風景や食事を楽しんでいる間にすっかり気に入り、ここに落ち着こうということになったという。何となくわかる。

 もちろん、ぼくはピアノがお目当てで入手したのだが、ラウンダーから出ている 《Soulful Dress》 (1983)、《Hot Tamale Baby》 (1985)、《Gatorhythms》 (1989)、《Blue House》 (1994)のあたりもピアノは相当よいらしい。このアルバムでは最後の2曲がかなりいい。マーシャ作の <American Dream>でのせたあと、ランディ・ニューマンの名曲 <Louisiana 1927> での絶唱は泣かせる。

 彼女のピアノはブギーウギーとザイデコ(ザディコ)とスワンプ・ロックをまぜたようなスタイルと評されている。が、このアルバムではなかなかピアノをまとめて聞けない。その分、ヴォーカルとアンサンブルとはたっぷり聞ける。ノリノリのアルバムである。

 PBS の評判のシリーズ "The Blues" (produced by Martin Scorsese) の中の 《Piano Blues》 にはマーシャも出てくる。これについては近日中に取上げます。