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今年中に30枚 (17) Diana Krall: When I Look in Your Eyes


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 Jay Graydon 好みのピアニスト、カナダ(Nanaimo, British Columbia)出身の Diana Krall の1999年のアルバム。

 Diana Krall: 《When I Look in Your Eyes》
  (Verve IMPD-304, 1999)

 このアルバムでジェイ好みのトラックを探すと、たぶんトラック11 <The Best Thing for You> あたりじゃないかな。快速調のナンバーでご機嫌。上の番号は普通の CD。SACD 版じゃないけど、かなり音はくっきりすっきり。このアルバムの売りの一つはジョニー・マンデル編曲のオーケストラ伴奏が7曲で附くことだろうけど、特に弦の音などはきれい。

 きれいと言えば、全体にきれいで、夕暮れの都会的なおしゃれなセンスが全篇に横溢している。ぼくはピアニストだから、もちろん、ピアノを聴くために入手したが、もっとごりごり弾いてほしかった。だが、Tommy LiPuma のプロデュースのもと、おそらくピアノ・ソロの小節数まで厳密に全体のバランスの中で計算されているようなつくりだから、数コーラスにわたって心ゆくまでダイアナのピアノを聴きたいという希望はかなえられない。

 ボーナス・トラック <Why Should I Care> を除き、基本ユニットはダイアナのピアノとヴォーカルにギターのラッセル・マローンの組合せ。曲により、ベースのジョン・クレイトンとドラムズのジェフ・ハミルトンが加わる。ベースのある曲では多くはこのベーシストが編曲をしている。

 中でも、ダイアナとラッセルだけのトラック7 <I Can't Give You Anything but Love> が非常にスリリング。ピアニストなら一度はこういう形で録音してみたいのじゃないだろうか。ベース抜きで、べースの役割はダイアナの左手が行い、あとはそれにのっかって右手のソロやコードワークと、ラッセルのコードのカッティングやソロが聞かれ、こたえられない心地よさ。

 ダイアナは抑制された正確なタッチでソロを叩いてゆくが、上にも書いたトラック11 <The Best Thing for You> では珍しく少し強くキーをたたいていて、おやっと思い、うれしくなる。ギターとの掛合いもいいんだけど、もうちょっと長くソロをやってくれないかな。ひょっとして、ラリー・カールトンみたいにソロも予め全部決めてあるのか。

 ダイアナはヴォーカルももちろん聞かせる。声のファンも多いと思う。が、何といってもダイアナの魅力はその super-sharp なピアノのタッチ。こんなにリズムが自在に扱え切味の鋭いピアノというのは、あるようで滅多にない。このリズムの解釈はゾクゾクする。ジェイ・グレイドンがダイアナを好きなわけが少し分かった気がする。