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Liam Clancy, Tommy Makem: The Lark in the Morning


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 昨日触れた超有名盤。

 Liam Clancy, Tommy Makem, Family & Friends: 《The Lark in the Morning》
  (Tradition TCD 1001, 1955/1996)

 パディ・タニーの歌がまとめて聞ける CD というと、現在これしかないと思う。収められているパディの歌は、

The Lark in the Morning
Rockin' the Cradle
Roisin Dubh
The Lowlands of Holland
Maggy Pickens (lilting)

の五つで、きのう触れたパディのレパートリー中珠玉の傑作とされる三曲はここには含まれていない。<Roisin Dubh> はアイルランド語で歌っている。この五曲からベスト・トラックを選ぶなら <The Lowlands of Holland> だろうか。あるいは冒頭の短い <The Lark in the Morning> か。

 アルバム全体としては聞きどころの多い、まごうかたなき名盤で、モノラル録音(1955年8月〜12月録音)ながら、今も輝きは失せない。他にパディ以外の歌や器楽曲も収録。いずれもすばらしい。
 リアム・クランシーが記す本盤のエピソードはおもしろい。アラン・ローマックスに続けとばかり米国から録音しにやってきたダイアン・ハミルトンがリアムの家の戸をノックしたのは1955年10月初旬の土曜夜のこと。伝統音楽の録音に来た次第を告げ、明日ケリー県に有名なフィドラーを探しに行くんだが、よければ同行しないと誘うダイアン。リアムは答えて、日曜はふつう11時半のミサに行くんだけれど、もし10時のミサに起きられたら一緒に行くよと。そして、この同行はリアムの人生を変えることになったという。なお、日曜朝のミサはふつうこのように複数回ある。早起き(といっても10時!?)用と遅寝用。

 不思議なことというか、うれしいことだが、きのうの 《The Stone Fiddle》 といい、きょうの 《The Lark in the Morning》 といい、米国から非常な安価で入手できる。
 ローマックスといい、ハミルトンといい、この時代のアメリカ人民俗音楽研究家には感謝せねばなるまい。それにしても、1950年代のアイルランド伝統音楽の録音について、系統的に調べたものはあるのだろうか。この時代は古い演唱法や詩歌の記憶を有する人たちがまだ活躍していた最後の時ではないかと思う。アメリカからやってきた人たちは土地の古老のアイルランド語をどの程度理解したのか。時間のあるときに少しずつ50年代の録音を調べてみよう。