Tigh Mhíchíl

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Lament


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 アイルランド伝統音楽の企画物オムニバスとして出色のアルバム。

 Various Artists: Lament (Real World CDRW 27, 1993)

 テーマは「嘆き」で、哀しみのスロー・エアを14人の音楽家がソロで演唱する。どれも名演名唱で痛切極まりないのだが、表現はむしろ控えめで、そのことが却って哀感を増す。所属レーベルや流派を超えてこれだけのミュージシャンが集まったのは、ひとえにその大義によるのだろう。

 大義とは北アイルランド紛争の死者を悼むこと。北の紛争の犠牲者に縁故者がいない家族をアイルランドで探すほうが難しいくらい、これは根が深く広い問題である。

 冒頭のデーヴィ・スピレーンの <北の死者への嘆き> のロー・ホィッスルのむせび泣くような音の余韻がまだ消えぬうちに、デクラン・マスタスンのイラン・パイプスが深く深く <輝かしい女性> を響かせる。<Seán Ó Duibhir a' Ghleanna> は歌(マレード・ニ・ゴーナル)とチェロ(ニール・マーティン)との両方の解釈で聞ける。なお、ここでのマレードの歌はもちろんアイルランド語
 おとといのレンのは英語版でした。この歌は日本はもちろん英語圏でもおそらくまったく分析されてません。ミュージシャンにはスロー・エアとして人気の曲なんだけど。特に関心のある向きのリクエストがあれば、いつか時間がある時に分析してみます。

 聞きどころは他にも多いけど、ぼくはピアノのミホール・オ・スーラヴォーンの <プランケット> の斬新でリリカルな解釈に、いつ聞いても驚かされる。彼とは電話で話したことがあるだけだが、意外に(失礼)あったかい声の人である。ここでのピアノは知的でありながら抑制された哀感をよく表現している。

 1. Lament for the Dead of the North - Davy Spillane
 2. The Bright Lady - Declan Masterson
 3. Seán Ó Duibhir A'Ghleanna - Paddy Glackin
 4. An Droighneán Donn - Maighréad Ní Dhomhnail
 5. Plunkett - Micheál Ó Súilleabháin
 6. One Breath - Alanna O'Kelly
 7. Port na bPúucaí - Tony McMahon
 8. Danny Boy - Christy Moore
 9. Táim-se im Chodhladh - Seán Óg Potts
10. Sliabh Geal gCua - Kevin Conneff
11. Carolan's Devotion - John Sheahan
12. An Bonnán Buí - Seán Potts
13. John O'Dwyer of the Glen - Neil Martin
14. O'Carolan's Farewell - Derek Bell