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Iona: The Book of Kells


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 きょうは Iona の1992年のアルバム。

 Iona: 《The Book of Kells》 (What WHAD 1287, 1992)

 Iona の二枚目に当たる。何といっても Joanne Hogg の歌が実にすばらしい。
 『ケルズの書』をモチーフにして全篇が織成されているが、ジョアンの歌は理屈ぬきに訴えかける力がある。つややかにして張りがある。バックのサウンドがどんなものであろうと、突き抜ける存在感がある。

 オープニングの曲 <Kells Opening Theme > が特によいが、この曲の歌詞は Celtic Music Online の藤田さんによると、アイルランド北西部の月明かりの海岸で着想を得たという。ドネゴールまで続く海を眺めながら『ケルズの書』の象徴の意味や、黙示録の玉座について思いをめぐらしている時にこの歌詞が浮かんだという。

 ぼくも人気のないドネゴール沖の海を眺めたことがあるが、あの寂寞たる灰色の海は確かに人に物を思わせる雰囲気がある。なお、ジョアンは北アイルランド北東部アントリム県のバリミーナ(英 Ballymena、愛 An Baile Meánach)の出身である。

 演奏について一言だけ。この頃のドラマー Terl Bryant の音は実にシャープ。Iona はケルトの霊性をテーマとしたクリスチャン・ロック・グループとされているが、アルバムの多くを占める器楽演奏の部分はブックレットに書かれた聖句の箇所を参照するようにということなのだろう。