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John Skelton: One at a Time


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 ホィッスル奏者ジョン・スケルトン(John Skelton)の1994年のアルバム。トラック2 <Peadar O'Riada's Jig> でのクリス・パーキンスン(Chris Parkinson)のピアノのバッキングにはやられた。ホィッスルの伴奏として目から鱗の演奏法。あんたはリオンか。

 John Skelton: 《One at a Time》 (Pan PAN 146CD, 1994)

 クリスはザ・ハウス・バンド(The House Band)時代からのジョンの盟友。他のトラックでもこういう弾きかたをしてくれればおもしろいが、リオン・ラッセル風がいちばんはっきりしているのがトラック2。ピアノのバッキングのあらゆるスタイルに興味ある人向け。クリスはたぶんイングランドの出身かな。
 まあ、しかし、こんなやりかたがアイルランド音楽に合うというのは本当におもしろい。
 アイルランド伝統音楽におけるピアノの演奏法に関してはいくらでも創意工夫の余地があると思う。よい例がティモ・アラコティラ(Timo Alakotila)のカレン・トウィード(Karen Tweed)との演奏だ。

 本アルバムではトラック9 <Lollipop Man> のロー・ホィッスルもなかなかいい。あと、トラック11-13も佳曲ぞろい。

 トラック13 <Rambling in the Meadow> はリリカルな曲で、ホィッスルとピアノのデュオでしっとり聞かせる。クリス・パーキンスンは、たとえばシンガー・ソングライターの場合のようなバッキングをしているが、ジョン・スケルトンのほうはアイルランド伝統音楽のイディオム(音楽的語法)から一歩も出ていない。このあたり、たとえば、上記のティモとカレンのデュオのように自由な音楽的対話の余地が果たしてまったくないのかどうか。その点が少し疑問が残る。この線で詰めてゆけばもっとおもしろくなるだろう。べつにアイルランド伝統音楽の語法を捨てよと言っているわけではない。リズムのほんのちょっとした解釈だけで、応答しているという雰囲気は出せるものだ。そのよい例がルーナサ(Lúnasa)で、彼らはバンド全体が反応しあっていることが手に取るように分かる。その点で少しジョンは固い。

 なお、オランダの Pan レーベルからの本アルバムは今は廃盤状態と思う。