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今年中に30枚 (7) John Renbourn: Traveller's Prayer


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 ジョン・レンボーン(g)がアイルランドイングランドの曲をとりあげた1998年のアルバムをついに入手。控えめに言って、ジョンの近年の最高作ではないか。

 John Renbourn: 《Traveller's Prayer》 (Shanachie 78018, 1998)

 ジョンとのつきあいは長いがアイリッシュもやれるとは知らなかった。だが、ギターではどうしても表現しきれない部分もある。たとえば低いDでのクラン(装飾音の一種)。しかし、それこそがイラン・パイプスなどの魅力の核のひとつでもあるので、相当に頑張ってる。結果はジョン流になっているけど、音はかなり魅力がある。

 音は実は魅力があるどころではない。このクラン挑戦が収められているトラック9 <South Wind/Feathered Nest> の音には腰を抜かしそうになった。もの凄い音がしている。本当のことを言うと、CD でここまでアクースティック・ギターがいい音するとは思わなかった。

 ぼくは何回かジョン・レンボーンを生で見たことがある。ペンタングルとして一回(ロンドン)、ジョンとジャッキー・マクシーの組合せで一回(大阪)、ジョンだけで一回(京都、たぶん)くらいは今すぐに想いだせる。だけど、今回のこの録音は凝りまくっている。へたするとライヴよりいいんじゃないか。ギターやマイクやピックアップやエンジニアやスタジオや、すべての点で全く妥協していないことが窺われる。蛇足だけど、こういういい音を聴いちゃうと、ペンタングルの未発表録音ばかり集めた 《The Lost Broadcasts 1968-1972》 の音はいかにも酷いね。もうちょっと何とかならんかったのかな。ジョンは本音ではああいう音には堪えられないんじゃないか。ミュージシャンはいい音を出すために全神経を使っているっていうことをアルバムをプロデュースする側はもっと考えてほしいね。

 ついでといっては何だが、本アルバムでの共演者を挙げておこう。一流どころというもおかしい凄い面々(ぼくの知ってる範囲では)。

Connor Byrne - fl
Maire Breathnach - fiddle
Joe McKenna - pipes, whistle
Dick Lee - cl, recorder
Bill Kemp - perc
Mairead Ni Dhomhnaill - vo
The Voice Squad -vo

 全10曲のうち2曲が歌。特にトラック8の歌は完全に歌い手まかせでジョンは弾かないってのもすごい。まあ、マレード・ニ・ゴーナルとヴォイス・スクワッドの組合せなら他に何にもいらないけれど。

 なお、そのトラック8からアルバム・タイトルはとられている。19世紀のある徴税人(Alexander Carmichael)がたまたまトラヴェラーたちと仲良くなって覚えた祈りのことが附属冊子には書いてある。この人が収集したほかのさまざまの祈りや聖歌などを収めた本が今でも簡単に入手できるはず。

 Alexander Carmichael: Carmina Gadelica (Floris Books, 1992/1997)

だけど、この本の中にはこの歌の歌詞はどうやらないようだ。同書の祈りに触発されてジョン・レンボーンが新たに作曲したものらしい。ということで、この歌はジョンはギターは弾かず作曲者として存在感を示す。

<追記>
 本アルバムは MSI から国内盤が出ています。《トラヴェラーズ・プレイヤー》 (MSIF2598) のタイトルで2700円。なお、英語の観点からいうとこの邦題は正しくありません。《トラヴェラーズ・プレア(ー)》 とでもすべきです。「プレイヤー」は綴りは同じ prayer ですが、意味は「祈る人」です。

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