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今年中に30枚 (5) Henry Butler


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 今年中の30枚計画の5枚目を入手。ニューオーリンズ・ピアノでいま一番好きな一人。

 Henry Butler: 《Homeland》 (Basin Street BSR 0802-02, 2004)

 うーん。タイコの音録りがもうちょっと抜けてたら最高なんだが。いや、音楽そのものはばっちり。LP ならピアノもギターももっと音が抜けると思うが、CD ならこの辺までなのか。やっぱ高音域の倍音って大きいね。抜けの感覚が変わってくる。あー、もう本当に CD がいやになってきた。SA-CD でも DVD-Audio でもなんでもいいんだが、この辺の音楽ジャンルが拾われる日は来るのだろうか。今は頭の中で本当はこういう風に鳴っているのだろうと想像しながら聴く他ない。こんな音のばっかり何枚も聴くのはしかし、かなわんなあ。もっとちゃんと鳴ってよ。ぼくはピアノの録音に関しては CD で感心したことは非常に少ない。

 ヘンリー・バトラーについては以前こちらに書いた。

 今回、このごきげんなアルバムをじっくり聞いて、プロフェッサー・ロングヘア(Professor Longhair [Henry Roeland "Roy" Byrd]; 1918-1980)から吸収したものをよくぞここまで展開したなあという感想を抱いた。隙間にこれでもかというくらいごりごり突っ込んでくる。この感覚は、好きな人とそうでない人と分かれるかもしれない。ぼくはピアノ弾きとして非常によくわかる。この種のニューオーリンズ独特のリズム*1にここまでの突っ込みが出来るとはあっぱれと言うしかない。まあ、隙間感が懐かしくなればプロフェッサー・ロングヘアを聴けばよいわけだし。

 そのプロフェッサー・ロングヘアへの敬愛の念はラスト・トラック<Ode To Fess>によく出ている。Fess というのは見慣れぬ語だが、間違いなく Professor を指す(そういう題のアルバムがある)。骨組みはプロフェッサー・ロングヘアなのだが、その間に自分の解釈をごりごりに入れ込んでいる。我が存在理由ここにありというピアニストとしての宣言のようにも聞こえる。歌詞は「ぼくはプロフェッサー・ロングヘアから受けたレッスンで大事なことを学んだ」というようなことが語られている。

 伝承曲<Iko Iko>を現代的にアレンジした<Some Iko>(Henry Butler 作となっている)も凄い斬新な解釈。リズムの骨格は<アイコ・アイコ>なんだが、そこにのっかる中身が凄い。ニューオーリンズ・ファンクとでも言えばよいか。

 歌も悪くないんだが、概して器楽曲のほうが出来がよい。たとえば、BGM のようだと謙遜している<OS7.0>(この題はなんだ? マック党か)もなかなか聞かせる。

 参加メンバーについて一言。やっぱターギ*2の Vasti Jackson がいかしてる。ソロもバッキングもどちらもいい。

 こちらで全曲試聴できる。

*1:Professor Longhair はこういうリズムを calypso や rhumba や boogie-woogie や street-parade 音楽などのリズムを混ぜ合わせて作ったといわれている

*2:ギターのこと