アイルランド語の姓名における O (2)
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前回、男性名詞の第一変化という言葉を使ったが、説明しなかった。これを説明しようとすると、そもそも名詞の格とはということになる。おおごとである。
実用的な観点から言うと、この部分は、できれば触れないで済ますほうがよい。現に、最も詳しい文法的記述を備えた、あの Learning Irish にも、第一変化のダの字も出てこない。
大体、格のうち、アイルランド語文法の議論で出てくるのはせいぜい、主格と属格と呼格だけだ。これだけでも、率直に言って大変である。しかも、それぞれ複数形もある。一つの名詞について五つや六つの格変化だけでも勘弁して欲しいと思うのに、本当はまだほかの格もあるなどと言われれば、逃げ出したくなる。だけど、実際にはあまり心配はいらない。あとは、ごく一部の慣用的に用いられる(固有)名詞の与格を知っていれば、日常的にはまったく困らない。すべての名詞について与格だけを取出して覚える必要は現実にはないのだ。
で、話を元に戻すと、名詞の活用は、属格単数(genitive singular)の形で区別し、全部で五種類の活用がある。ああ、しまった、五種類と言ってしまった。最もポピュラーな Foclóir Póca には四種類しか載っていない。だから、この話題はできれば避けたほうがよいのだ。
ええー、まあ、何種類かというような話は聞き流していただくことにして、話を続けます。この活用の形のうち、男性名の活用は大体、第一変化です。つまり、属格単数を作るには、語末の子音を狭子音にすればよい。例を挙げよう。
ng. bád, gs. báid
この bád は舟の意。
では、いよいよ男性名の例を挙げよう。右が Ó に続く形。
Conall → Ó Conaill
そこで、Conall の孫息子であるショーンを表そうとすれば次のようになる。
Seán Ó Conaill
ふうっと。(つづく)