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Clannad をアイルランド語で解く


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 この有名なアイルランドのグループ名について、いろんな説が飛び交っているらしい。ここではアイルランド語の立場から解いてみる。なお、巷で言う「ゲール語」はすべてアイルランド語ないしアイルランドゲール語と読替えてください。「ゲール語」という単一の特定の現代語は存在しません。

 まず、彼らの出身県ドネゴールのサイトの文章を掲げる。

Fuair Clannad a n-ainm ó 'an Clann as Dobhar' agus ciallaíonn seo an teaghlach as an baile Dobhar.

http://www.dun-na-ngall.com/clannad.html
これは彼らのグループ名の由来を説明したアイルランド語の文章である。これを読めば、アイルランド語のわかる人には、もうこれ以上説明は要らない。(同サイトの英訳はやや不正確なので注意。)

 日本語に訳してみると、「Clannad はその名前を 'an Clann as Dobhar' から採っており、これは Dobhar という町出身の一家の意である。」となる。

 この文章にはさらに説明が必要である。文法的には、an はアイルランド語の定冠詞、clann は名詞(「一族」の意)、as は前置詞(「〜からの」の意、次に与格をとる)。Dobhar は地名。つまり、'Clannad' という名称は an Clann as Dobhar の頭文字をとったアクロニム(頭字語)である。

 Dobhar は普通名詞としては「水」の意で、Dobhar 川という名称も昔あったが、ここでは町の名である。その町は、普通の地図では見つからないだろう。アイルランド全土を89分割した5万分の1の地図 Discovery Series (Ordnance Survey) の1番の地図には出ている。その地図で言うと、縦座標22、横座標83の位置に見つかる。

〔追記〕まだ、誤解がはびこっているみたいなので、念のために追加。clann は現代アイルランド語では普通「子どもたち」の意。たとえば、lánúin gan chlann というと「子どものいないカップル」の意。ちなみに、古いアイルランド語では、clannad という語があって、「植えること」の意。

〔追記2〕DIL はもともと22分冊でした。手許にあるのはそれを1冊にまとめた版で、それに上記の古い clannad という語が出ています。文献略語表はこちら