Tigh Mhíchíl

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アイルランド語のありがとう <コメント>


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 アイルランド語の「ありがとう」にあたる表現は

Go raibh maith agat.

である。これについて、純さんの 愛蘭事始 でご覧になったかたもあろう。なにしろ、こんな簡単そうな言いかたなのに、分析するとなると大変なのである。

 結論から言うと、あまり気にしないほうがいい。文法的にレベルの違う言いかたが混在しているので、ある段階で一気に理解するのが難しい。ポイントは、アイルランド語は、ふつうの言語なら最も簡単な言いかたがもっとも難しいということ。しかし、ことばとして使うのに何も気にする必要はない。

 以下は、本当に気になる人向けの瑣末な説明。

 (go) raibh は動詞 tá の仮定法現在の形。go はその際に用いる動詞小辞 (verbal particle)。「〜であったらいいのに」という願望を表す。これは中級文法の最終段階で出てくることがら。

 maith は名詞。「善」。

 tá ... agat は英語で言うと you have ... に相当する。アイルランド語には have に当る動詞はなく、こういう言いかたをする。「〜があなたのところにある → あなたは〜を持つ」。*1 このあたりは初級文法の始めのほうで出てくる。

 結局、全体では「善(よいこと)があなたのところにありますように → あなたがよいことにめぐまれますように」の意となる。英語だと May you have good -> Thank you.

*1:フィドルが(たまたま)あなたのところにある」と「あなたはフィドル所有する」とはじつはニュアンスがかなり違う。ここから、ミュージシャンの人生より楽器の人生のほうが長いという観念が生まれるとも言えるかもしれない。